大学教育における教育ビッグデータの蓄積・分析システムの開発


代表者名

緒方広明

大学

九州大学

チーム

ラーニングアナリティクスセンター(緒方研究室)

概要

近年,OER (Open Educational Resources)やMOOCs (Massive Open Online Courses)など,学校に限らない広範囲で数多くの学習者が参加する学習環境が普及している.また,多くの教育機関において,e-Learningシステムが導入され,長期にわたり運用がされてきている.このような状況において,教材の閲覧,メモ,成績,学生間の交流など多様かつ大量の学習ログが蓄積されつつあり,教育分野におけるビッグデータの利活用が注目されている。教育ビッグデータに関する研究はまだ始まったばかりの段階であり,さまざまな課題が残されている.特に,収集した教育ビッグデータを利用して,どのような分析ができるのか,どのようにして,分析結果を教育現場で効果的に利用するかは重要な課題である. 九州大学では、全国に先駆けて2013年度から学生所有PC必携化を実施し、2014年度からデジタル教科書の閲覧ログに基づく教育ビッグデータの利活用を開始している。これは、デジタル教科書配信システムのログと学内システムの学務情報等を統合して教育ビッグデータを構築し、学習分析(Learning Analytics)により教育と学習を改善することを目的としている。具体的には、学習管理システム(Moodle), eポートフォリオシステム(Mahara) 、電子教材システム(BookLooper)を統合した、M2B(みつば)システムを全学に導入し、全学の学生約19,000名と教職員約8,000名の800万件(2016年3月時点)を超える学習ログを蓄積、分析している。このために、九州大学は2016年2月にラーニングアナリティクスセンターを設置した。 今回は、以下のシステムに着目して、発表を行う。 (1) 授業設計や教材改善のフィードバック:これまで授業設計や改善は, 教員自身による経験によって行うことが多かった。しかし, 授業に関する教育ビッグデータを分析することで, 科学的な視点で改善していくことが可能となる. 具体的には, 電子教材システムで閲覧している教材に対して, 学生が行ったズームインやアウトなどの動作ロ グをもとに, どの授業のどの教材のどのページが, 教材改善する必要があるのか明らかにする. また, 教材を改善するにあたっても, どのように修正する必要があるのか,教材と動作ログをもとに改善案をフィードバックするまでの過程を支援する. (2) 成績予測のフィードバック:これまで生徒の成績予測は, 授業内の生徒の学習状況や中間スコアを確認しながら, 教員の経験によって学生へのフォローを行うことが多かった。しかし、これだけでは授業外での生徒の予習・復習時間など, 授業外の学習に費やした学習時間や活動内容を確認することはできない. M2Bシステムにより収集した 教育ビッグデータには, Moodleの学生の出席率, レポートスコア, 小テストや,BookLooperの教材閲覧の合計時間やマーカーやメモなどの操作ログ数などが含まれており,これらのデータを予測モデルのパラメータとして利活用することで, 単位の落としそうな学生の早期発見や最終成績の予測が可能となる. (3) リアルタイムのフィードバック:電子教材を授業に取り入れることにより, 学生の操作ログの状況をリアルタイム処理することで, 学習の傾向を把握することが可能となる.具体的には, 教員が説明するスライドの流れに沿って, 学生が読んでいるかどうか把握する事で, 授業速度の改善や不自然な学習傾向にある学生の早期のフォローが可能となる. 教育ビッグデータは,教育改善効果を検証するためのエビデンスとして非常に重要なものになり得る.うまく収集・活用を行えば,これまで教員や学生の勘と経験によって行われていた教育改善・学習改善が,データをもとに科学的に検証しつつ実行できるという,非常に高いポテンシャルをもっていると思われる.今後のさらなる研究成果が大いに期待される.

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